03/4/7

　メコンデルタへの旅の二日目には、小さな観光用クルーズ船に乗り、デルタに網の目のように張り巡らされている運河をたどり、奥地の農園を訪ねました。さらに細い運河にはいるため、手漕ぎボートに２，３人ずつ分乗し、奥を目指しました。櫂が水をかく音のほか何も聞こえない、静かで牧歌的な風景が、目の前に次々に展開します。何百年も変わらないたたずまいでしょう。

　川沿いにぽつりぽつりと農家があり、裸足の子供たちが出てきて、手を振ってくれます。アヒルと子供たちが一緒になって水に戯れています。運河の水で洗濯をする人、食器を洗う人、洗髪をしている若い女も見ました。

　ところどころに、運河を渡るため、丸太一本幅の橋が架かっています。船の通行を邪魔しないよう、真ん中の部分は高く架けられています。手すりがついていますが、渡るのは、こわそうです。そこを自転車を抱えて、ヒョイヒョイと渡っていく男がいます。モンキー・ブリッジといわれる原始的な橋は、随所に見られます。

　再びクルーズ船に乗り、メコン本流にもどると、その川幅の大きさに驚かされました。どちらの方向が上流やら、下流やら分かりません。これが川とは思えないほどでした。折から吹いてきた風によるうねりで、小さなクルーズ船は、木の葉のように揺れ、しぶきに濡れました。