03/4/2

　サイゴンにようやくやってきた。ホーチミン市と名を変えているが、やはりサイゴンと呼びたい。1975年４月30日、劇的な終結を迎えたヴェトナム戦争の印象は、私たち世代には色濃い。はるか遠い国で起きた無縁の戦争というのではない、強烈なイメージが頭に焼き付いている。そのサイゴンに、今、来ている。

　サイゴンの第１印象は、道路を占領し、無法に走り回る、おびただしい数のバイクである。交通信号は、ほとんどない。その道を、人々はバイクで駆けていく。交通ルール、なんていうものもないようだ。二人乗りはおろか、３人乗り、場合によっては４人乗りまである。車の前にどんどん割り込んでくる。それどころか、すぐ前を横切る。左折する。右折する。車は遠慮がちに走る。互いにクラクションを響かせ合う。「プー、プー」、「ピッ、ピッ」。ひっきりなしにわめき合っている。無法、というよりは、エネルギーを感じる。

　上の画像は、バスの車中から見た、サイゴン中心部の路上である。バスは信号で止まっているわけではない。これでも走っているのである。その前を左手の道から、バイクの大群が走り込んでくる様である。右から追い越して左へ行こうとするものもある。「危ない！」と目をつぶりたくなる場面に何度も出会った。