03/03/15

　２月１２日、ワールド航空サービスの戸田さんから電話があった。旅行代金の支払い、ビザの申請、旅行保険の申し込みなどの手続きの必要があるのだ。これは、２６日開催のツアー説明会までにすればよいとのことで、当日持参することにした。ついでに、「以前、冨野さんに依頼していた、延泊のホテルがどこになったでしょうか」 と聞く。「冨野は、目下添乗に出ていて留守ですから、調べてからお返事します」 と言う。

　再び電話があり、第１希望の「マジェスティック・ホテル」になった。ここは、かつて開高健がヴェトナム滞在の基地として、サイゴンに滞在したときには、定宿にしていたサイゴン川沿いのホテルである。

　最終日の夕方、ツアーは、ハノイからホーチミンまで移動して、市内で夕食をとり、夜半の飛行機で成田に向かうことになっている。私たちは、夕食までは一緒に行動し、その後ツアーから離れて、ホテルにチェックインしたいと、行動の確認もした。さらに、帰りの飛行便を確認する。Ｏｋだった。

　もうひとつ、成田まで車で行くので、予約駐車場があるかを聞くと、「確認します」と、電話が切れた。再び電話があり、当初、ツアーは夕方の便で出発だったが、午前中に変更になったという。そこで、前泊することにし、「ホリデイ・イン」の予約を頼んだ。前泊すると、１５日間は車の駐車料が無料になるので、都合がいい。スイスに出かけたときには、このホテルに前泊して３６日間も駐車したが、全期間無料になった。

　この日、戸田さんとは何度も電話でやりとりした。前にも書いたことだが、この人は、はち切れんばかりの元気な声で、「戸田が承りました」、「戸田が話しています」と、名前を繰り返すのが面白かった。「否応なしに、戸田さんの名前は覚えるし、彼女と旅をしたら、心配なことなど吹っ飛んでいくだろうね」　と、夫ともども感心した。

　２月２６日。説明会に出席し、参加者の顔あわせをする。総勢１４名の由。移動する土地についての説明と、旅の心構えの話が中心だ。

　「用心深く、持ち物に注意すること」、「生水は飲まないこと」、その他。すでに案じていることを、繰り返し言われた。もっとも、説明を聞きながら、あれこれ余分な心配をするより、あるがままのヴェトナムの姿を、無垢な気持ちで受け止めよう。そんな気持ちのほうが強くなっていく。旅を決めたからには、「なるようになる」　と居直った。自分の肌に触れるその土地の空気を感じながら、身も心も呼吸すること。それが旅の醍醐味だ。日本の日常の生活にしたって、程度の差こそあれ、危ないといわれる場所には行かないし、物騒な時間にひとり歩きすることは避ける。無意識のうちに、安全に配慮し、自衛はしているのだ。それをちょっとだけ、注意深くすればいい。

　今回のツアーは、南部ではメコンデルタのカントー、中部では旧都ホイアンとフエ、北部では景勝のいいことで知られているハロン湾を訪ねることが中心になっている。大都市のハノイとホーチミン（旧サイゴン）は、経由地として、ちょっと見るだけである。日本と同じくらい南北に拡がっている国土を、さわりの部分だけ、１０日で見ようというのだから無理もない。だが、ちょっと物足りない。私たちは、このツアーの最後に、個人分としてホーチミン滞在を５日加え、この町と、その周辺をじっくり見ることにした。旅行社によると、これまで、ヴェトナム・ツアーでの延泊を希望した人はいないとのことだ。単独行動は、いささか冒険の部分はあるが、そこが面白いともいえる。