第１日目

06/6/28

タクラマカン砂漠をめぐる旅日記　２

１日目成田から北京経由、ウルムチ到着

　ウルムチの人民広場の一角では大型スクリーンに映画が上映されていて、たくさんの人々が楽しんでいる。午後１０時半過ぎ。背景中央やや右のライトアップされている建物が、泊まった海徳酒店ホテル

旅の１日目　６月９日（金）

　成田空港集合が早いので、昨夜は空港近くの「成田ビュー・ホテル」に前泊。夜のニュースで、ザルカウイが殺されたと報じていた。今回の旅は、イスラム圏を訪れる旅だから、影響がないといいけれど・・・。

　ツアーの集合場所は、第２ターミナルの出発ロビー。１週間前に第１ターミナルの南ウイングが完成して利用が始まったので、４月半ばに来たときよりも混雑が緩和され、ありがたい。搭乗手続きもろもろは、簡単に済んだ。

　ツアー参加者は13名（男２名、女11名）。なんと、夫婦で参加したのは１組・私たちだけで、拍子抜けした。私の周りには、アジアの旅は衛生面で過酷な環境だからと、敬遠する女性が多い。それからすると、希有な集団だと、まずは驚く。「シルクロードを、ヨーロッパ側の端からアジア側の端まで辿る旅をしています」とか、「ここまで来られたのだから、その先を訪れようと考えて・・・」とか、参加の理由はさまざまだ。参加者は、60歳代後半から70歳代前半中心で、元気な人たちばかり。最高齢者は80歳。この分では、私だって、まだまだ旅はできると、励まされる。因みに希少価値？の男性は、62歳のＳ氏と夫。Ｓ氏は、多勢の女性軍を相手にして、サービス精神旺盛な愉快な人物。食事時にアルコールをきこしめすと、一段と饒舌になって、座を盛り上げた。

　成田から北京までは空路３時間半。そこで中継してウルムチまで３時間40分。北京でのセキュリティ・チェックで、夫のスーツ・ケースが引っかかった。原因は、２本の懐中電灯。係員の前でピカッと点灯したら、ＯＫ。それにアルコールの機内持ち込みは、不可。ミネラル・ウオーターも、目の前で栓を開けて匂いを嗅ぎ、確かめられている。とても厳しい。北京までは中国国際航空。B757エコノミークラスの座席は、前後に極端に詰め込まれている。夫は足が前の席につかえるくらいだ。前の席の人がシートを倒すと、機内食を食べるのに差し支えるほど。こんなに狭いシートの国際線は初めてだ。北京ーウルムチ間の中国南方航空のほうが座席にゆとりがある。サービスもよかった。

　快晴だったので、空から眼下の様子がよく眺められた。中国沿岸の都市部を離れると、やがてよく耕された畑の区画や緑が現れた。ウルムチに到着する少し前からは、山や川、山脈など、表情豊かな緑と砂漠が続き、その中に横たわる高速道路が目立った。いよいよ、旅の舞台に登場だと、気分が高揚した。

　ウルムチ空港に降り立つと、むっとした熱気が歓迎してくれた。今日の気温は最低19度Ｃ、最高31度Ｃの由。スルー・ガイドの譚（たん）さん（この人は北京から合流していた）と、ドライバーの魏（ぎ）さんが待っていた。２人とも漢人で、「新彊ウイグル自治区では、少数民族です」。(注、「彊」の左側の弓扁の下のほうには土があるが、変換できないので、以後、土なしの表記をする）

　夕刻７時40分頃に、第１夜となるウルムチの「新彊海徳酒店」にチェックイン。ウルムチ一の最高級ホテルだという。夕食はホテルのレストラン「農園軒」で、南味料理。メニューは、テーブル一杯に並びましたね。おつまみの盛り合わせ、チキンのみそ味炒め、中華風ビーフ焼き、江南風ロース煮込み、肉の甘辛炒め、南味魚料理、旬野菜の炒め、桜海老とネギのチャーハン、スープ、ミックス蒸しパンと揚げパン、季節のフルーツ。すでに機中で夕食が出たから、食欲はない。ほとんど手つかずで、食事が終わったときのテーブルは、始まったときとほとんど変化なし！　夫は青島ビール（中国語で卑酒、ただし卑には口扁がつく）を注文したが、おいしくないという。小瓶で28元（約400円）。ここのビールがいちばん高かった。

　日本と北京の時差は１時間。旅を続けるには、時差ボケにならず、ありがたい。ただし、広大な領土の中国で、北京時間を標準に生活しているのは、おてんとう様の動きからすると、きわめて不自然だ。列車の時刻や公共機関は北京時間だが、新彊ウイグル自治区では、実際に即して、時差２時間遅れの新彊時間を使っている。それでも、東のウルムチ（東経87度）と西のカシュガル（東経76度）では、太陽の動きには１時間ほどのズレがある。旅の行程は北京時間で進んだ。土地によっては、ホテル近くの公園の賑わいを見た。子どもの姿もあった。時計を見ると、夜半１時過ぎ。だが、現地では10時か11時頃になる。体内時計のリズムに従った生活なのだと、納得した。

　ホテルの前に人民広場があり、たくさんの人が集まり、何か行われているようだ。夫はカメラを抱えてぶらつきに出かけた。大きな広場は、いくつかのコーナーに分かれて使われている。石張りの広場では、子供たちがローラー・ブレーダーで遊んでいる。そのまわりで親たちが、子供らを叱咤激励している。泣きべそをかいて怯んでいる子を厳しくしかっている母親がいる。大スクリーンが設置されている広場では、映画が上映され、たくさんの人が座り込んで観ている。暗い一角には、漢人の年寄りが集まって歌と舞を楽しむ輪ができている。植え込みのある一角では、カップルたちが語り合っている。深夜だというのに、たくさんの人々が広場に群れているのには驚いた。

　夜10時になっても、まだ明るい。ホテルの隣にある便利屋で、ミネラル・ウオーターを購入。１本1.5元（日本円に換算すると21円）也。ミネラル・ウオーターの値段は、土地や場所によって1.5元、２元、３元、４元と差が大きかった。その後、各地で店を覗くたびに、地方での物価には、かなりの差があるらしいと、感じた。

日が変わって、１時頃に就寝。最初の移動だけで、１日がかりだった。おやすみなさい。