独裁者というのは、いずこも同じですね。自分の権力を誇示するために、ばかでかい建物を造りたがります。ルーマニアのチャウシェスクは、過去のどの独裁者が造ったよりも巨大な建物を造ろうとしました。それがこの「国民の館」と称する宮殿です。ふんだんに大理石を使い、造ったのがヨーロッパ一大きな建造物です。大きいというのは、部屋数とか、延べ床面積とか、建物の容積とかについてです。それらの点で世界一大きいのは、米国のベンタゴン（国防総省の建物。9.11テロで一部が破壊された）で、それに次いで大きいのだそうです。ルーマニアは貧しい国です。農民たちが生み出すわずかな富をこの建物を造るのに注ぎ込みました。結局彼は、完成を見ずして、独裁者の最期を迎えました。この建物だけではありません。この建物を正面の突き当たりとする大通りを、パリのシャンゼリゼを模して建設しました。道路の幅も長さも、シャンゼリゼよりわずかに大きくした、といわれています。独裁者はなんでも一番が好きのようです。国民を極貧に陥れ、いまだにその影響をこうむらせている愚行を、この建物と周辺の街つくりが告発しています。下の写真は、館前広場の中心から見たパノラマです。中央が上記の建物、一番右手に、ブカレスト風シャンゼリゼが望めます。